語彙力ゼロなアドレナリン女子は、ダウナーなイケボ男子をおとしたい

恋愛以前のコミュ力

 初めて出来た好きな人は難攻不落だ。若くして余命一年と言われる国民病にかかっており、無気力状態になっている。
「病気以前に、基本的にはエネルギー温存型なのよ、アイツは」とお姉さんの藍は言う。同い年の藍とは仲良くなったこともあり、翡翠に関して色んな話を聞いていた。

 翡翠は文武両道を絵に描いたような感じで、勉強もできるし運動神経もいい、そんな学生のようだ。だからこそ、病気によるつまずきは本人にとって痛手だったみたい、と藍は言う。

 学校に迎えに行くと、翡翠の同級生に声をかけられることがある。

「木瀬翡翠を迎えに来た」と言いながら、同級生達から翡翠の好みをリサーチしようとすると、必ず彼女かと聞かれるのだ。

「彼女じゃない」と言ったら、男子は興味津々になり、女子はホッと肩を撫でおろす。

 とはいえ、やってきた翡翠が「よ、ストーカー」と言うことで、私のイメージは決定づけられてしまう。
 ミステリアスな要素はゼロで、「ストーカーさんこんにちは」と声をかけられることも増えていた。
 非常に不服だ。
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