シテくれないわたしの彼氏~モンスターバトル~
 そして、スマホを出すように言ってアカウントを申請し合う。用があったら連絡してと言った。これが大学生・岸井信との出会いだ。
 あれは一目ぼれだったんだ、と今では分かる。図書館で勉強を教えてもらう、大学の図書館に連れて行ってもらう、そんな段階を経て、少しずつ親しくなった。

 私の方が好きなのは明らかだったけれど、いつかの勉強中に、「付き合うとか無理だよね?」と聞いたら、「いいよ、付き合おう」と返されて驚いた。

 その後、両親にも紹介して、私は彼の家に遊びに行くことも許されるようになる。とはいっても、なんにもない。私からのハグ以上のなにものもない。彼からはいつもマスカットのような香りがして、私が一方的に癒されている。

 ピュアな関係だ。
 ピュアな感じをとても気に入ってもいる。

 けれど、一切手綱を引かれない関係に、不安を抱いているのも事実だった。
 何にもない形だけの「付き合っている」なら、小学生の時にも経験したことがある。

 お互いに好きってだけで、一緒に帰るってだけのピュアな付き合い。
 別に、それでもいいけどなあ。
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