シテくれないわたしの彼氏~モンスターバトル~

大好きな彼氏とのピュアな付き合い

 彼氏・岸井信とは1年ほど前に区立図書館で出会った。パパの会社ではカウンセリング部門へ配属される予定だと言われていたので、普段からカウンセリング系の本を読むようにしているのだ。

 ネットで探して気になっていた本を、図書館で検索にかけて調べる。配架されていることを確認して、所定の棚を探していった。
 コミックセラピーの入門のような本だったと思う。

 ちょうど見つけて手を伸ばしたときに、横から来た男性に先取りされた。
「あ」
 と言うと、その人はこちらを見る。

 なに?と聞かれたような気がして、「その本、私も見たかったです」と言った。
「あ、なるほど」と言って手渡してくれる。

「え、でも」
「大学の図書館にもあるんだけど、今日は行くの面倒だったから。でもいいよ」
「ありがとうございます。大学にも図書館あるんですね」
「あるし、一般の人も入れるよ。本が好きなら、行けばいいと思う」
「え?」

「結構来ている?たまに見かける」
 目元に影が落ちる、静かな印象の顔立ちの男性だ。
 目元に影を作る涙袋が特徴的な顔立ちだ。そんな年が離れているようには感じなかった。

 ぼんやりとしていると、
「でも、誤解をされると分が悪いから、この辺で」
 と言って去ろうとする。

 行ってしまうと思ったとたん、私は「待ってください」と引き止めていた。その人はゆっくりと振り返る。
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