公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

話せない理由

「ねえ、サガード。一つ聞いてもいいかな?」
「な、なんだ?」
「サガードが婚約する相手って、私だったりするの?」
「……何?」

 私の質問に、サガードは固まっていた。
 その反応は、どういうものなのだろうか。図星だったからか、それとも素っ頓狂な質問だったからだろうか。
 ただ、私は思ったのである。私に言うのが、そもそも駄目。彼の婚約者が私であるなら、それも成り立つのではないかと。
 いや、逆にそれ以外なら、どうして私に話すのが駄目なのだろうか。その理由がわからず、私はそんな結論しか出せなかったのである。

「違うのかな? それなら、私に言えない理由も納得できなくはないんだけど……」
「い、いや、そんなことはない……」
「そうなの? だったら、どうして私に話せないのか。その理由だけでも教えてくれない?」
「えっと、それは……」

 私の質問に、サガードはあたふたしていた。
 私の主観でしかないかもしれないが、それは理由を探しているように見える。

「サガード、どの道、それはまだ決まったことではないんだよね? それなのに、そんなに隠さないといけないの?」
「い、いや、別にそういう訳ではないんだが……」
「それなら、どういう訳なの?」
「……」

 サガードは、私の言葉にゆっくりと目を瞑った。
 それは、眠たいからではないだろう。表情からもわかるが、何かを考えるためにそうしているのだ。
 その後、サガードはゆっくりと目を開いた。その表情は、先程までとはまったく違う。真剣な表情である。

「ルネリア、お前の予測はあっている。俺の婚約者になるかもしれない人物、それはお前なんだ」
「やっぱり、そうなんだ……」

 サガードの言葉に、私の心は跳ねた。
 先程まで抱いていたもやもやが、晴れていくのを感じる。私は、彼の言葉に安心しているのだ。そして、同時にそれを嬉しく思っているのである。
 そのことに、自分でも驚いていた。この感情は、一体なんなのだろうか。それを私は考える。

「それをどうしてお前に話せなかったのか。その理由は単純だ。その婚約を言い出したのが……俺だからなんだ」
「え?」
「俺が頼んだんだ……いや、正確には違うな。俺の気持ちを察した兄上が父上に掛け合って、その結果俺が打ち明けることになったということなんだが」
「それって……」

 サガードは、ゆっくりと事情を話し始めた。
 それに対して、私は混乱する。彼の言っていることを総合すると、それはつまりそういうことなのではないかと思ったからだ。
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