公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

思わず眠って(エルーズ視点)

「……うん?」
「あ、起きましたか?」

 僕は、ゆっくりと目を覚ました。
 最初に目に入ってきたのは、こちらを覗き込むケリーの姿である。彼女は、笑顔で僕のことを見ていた。その顔は、とても美しい。
 そんなことをぼんやりと考えて、僕はあることを理解した。僕はベッドに寝転がって、そのまま寝てしまったのだと。

「ごめん、ケリー。僕、寝ちゃったみたいだね……」
「別に大丈夫ですよ」
「でも、急に押しかけてきて、寝るなんて滅茶苦茶だし……」
「いえ、疲れていたんでしょうし、仕方ありませんよ。それに、エルーズ様の寝顔を見ているのも楽しかったですから」
「そうなの?」
「ええ、そうなんです」

 僕の謝罪に対して、ケリーはそんなことを言ってきた。
 確かに、彼女は先程笑顔で僕のことを見ていた。楽しかったという言葉に、嘘偽りはないだろう。
 ただ、それでも失礼なことをしてしまった。こちらから押しかけておいて、寝るなんてあってはならないことだ。
 それに、せっかく来たのに寝るなんて、時間がもったいない。時間は有限なのだから、無駄にしたくはなかった。

「……僕は、どれくらい寝ていたのかな?」
「十五分程でしょうか? そんなに寝てはいませんよ」
「そっか、よかった……」

 ケリーの言葉に、僕は少し安心する。
 一時間や二時間といった長い時間寝ていなくて、本当に良かった。十五分ならまだ時間はある。これから、ケリーとの時間を楽しめるのだ。

「……それにしても、エルーズ様は本当にお綺麗ですね」
「え?」
「寝顔を見ていたら、そう思ったんです。男の子にこんなことを言うべきではないのかもしれませんけど、とても美しくて思わず見惚れてしまいました」
「そうなんだ……ありがとう」

 ケリーは、僕を美しいと言ってきた。
 僕は、そういった旨のことをよく言われる。あまりよくわからないが、僕は他人からそう取られるようなのだ。
 こういう時になんと答えるべきなのだろうか。それは、難しい所である。とりあえず、お礼を言ったりするのだが、それであっているのだろうか。

「ケリーも、綺麗だよ」
「え? そうですか? それは、ありがとうございます……」

 僕は、お返しにケリーにも綺麗だと言っておいた。
 それは、素直な気持ちである。ケリーは、本当に綺麗だ。僕なんかよりも、余程美しい。
 そんな僕の言葉に、ケリーは顔を赤くしていた。どうやら、照れているようだ。
 彼女のそんな顔を見ていると、僕の中に別の感想が思い浮かんできた。可愛いとそう思ったのである。
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