公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

調査2 真ん中のお兄様

 一日中ついていたが、イルフェアお姉様は特に何かを見せることはなかった。
 考えてみれば、それは当然のことだ。例え裏があったとしても、一緒にいてそれを見せる訳がない。
 ということは、やはり隠れて見守るべきだろう。ただ、イルフェアお姉様は妙に鋭いので、対象を変えるべきかもしれない。

「さて……」

 という訳で、私はウルスドお兄様のことを観察していた。
 彼は、三人いるお兄様の内の一人だ。真ん中の兄である。

「……ルネリア、もしかしてそれで隠れているつもりなのか?」
「え? あ、いや、その……」
「どうしたんだ? そんな風に隠れて……もしかして、何かやましいことでもしているのか?」
「そ、そんなことはありません」

 隠れていようと思っていた私は、何故か見つかってしまった。
 そんなにわかりやすかっただろうか。自分では、きちんと隠れているつもりだったのだが。

「うん? そういえば、姉上から聞いたな……なんか、姉上の立ち振る舞いを観察していたとか」
「え? あ、まあ、そうですね……」
「まさか、俺の立ち振る舞いも観察しているのか? 言っておくが、姉上と比べると俺から学べる部分は少ないと思うぞ?」

 ウルスドお兄様は、そう言って笑っていた。
 確かに、彼は貴族らしいという訳ではない。どちらかというと、オルティナお姉様に近いタイプだ。

「おい、今、心の中で納得していなかったか?」
「え? いえ、そんなことはありませんよ。ウルスドお兄様からも学ぶことは、たくさんあります」
「目が泳いでいるぞ?」
「気のせいじゃないですか?」

 私の心を、何故かウルスドお兄様は読んでいた。何故、こんなにも簡単にわかるのだろうか。

「まあ、貴族らしくない自覚はあるから、いいんだけどな。俺は、兄上や姉上のようにはなれそうにない」
「そ、そうなのですか?」
「ああ、俺はそういう堅苦しいのが、あんまり好きじゃないんだよ。もっと自由に生きたいというか……」

 ウルスドお兄様は、少し悲しそうな笑みを浮かべていた。
 もしかして、彼は貴族としての生活に不満を感じているのだろうか。もっとやりたいことがあるとか、そういうことなのかもしれない。

「おっと、悪かったな……あまり気にしないでくれ。自分でも、贅沢な悩みだと思っているんだ、これは……」
「え? えっと……わかりました」

 ウルスドお兄様は、私の頭をゆっくりと撫でてきた。
 よくわからないが、彼の中にも色々と悩みがあるようだ。それはきっと、私に相談しても解決することではないのだろう。
 それは少し悲しい気がした。お兄様の力になれたらいいのに。そんな感想を私は、抱くのだった。
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