公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

意外な出自

 私とリオネクスさんは、客室に戻って来ていた。今は、サガードも含めて談笑中である。

「……あ、そうだ。リオネクスさんに、一つ聞きたいことがあるんです」
「おや、なんですか?」

 そこで、私はとあることを思い出した。そういえば、私はいつだったか、サガードの家庭教師の先生に、とあることを思っていたのだ。
 せっかくなので、それを聞いてみることにしよう。もしかしたら、偶然に偶然が重なっているということが、あるかもしれない。

「私のお兄様……ウルスドお兄様には婚約者がいるんです。その人は、クレーナさんというんです。もしかして……」
「ああ、彼女ですか。ええ、あなたの予測通り、私の教え子ですよ」
「やっぱり……」

 どうやら、私の予測は当たっていたようだ。クレーナさんは、やはりリオネクスさんの教え子だったのである。
 まさか、そこも繋がっているとは。偶然というのは、恐ろしいものである。

「しかし、どうしてわかったんですか?」
「えっと……その思想が似ていたというか」
「思想?」
「クレーナさんは、平民を大切にするように心がけているというか、なんというか……」
「そうですか……私の教えを、彼女は守ってくれているようですね」

 私の言葉に、リオネクスさんは笑みを浮かべていた。なんだか、とても嬉しそうである。

「先生の思想か。そういえば、俺も先生に聞いてみたいことがあったんだ」
「おや、なんですか?」
「先生ってさ。その……平民じゃないよな? 多分、貴族か何かの出身というか……」
「ええ、そうですよ」
「え? そうなんですか?」

 サガードの質問に対するリオネクスの答えに、私は驚いた。なぜなら、そんなことはまったく知らなかったからである。
 てっきり、彼は平民だと思っていた。だが、考えてみれば、貴族の家庭教師なんてしているのだから、貴族というのはむしろ自然なことなのかもしれない。
 ただ、その割に、リオネクスさんは貴族らしくないような気がする。よく村にも来ていたし、色々な役目があるはずの貴族というには少し変だ。

「といっても、もう没落しているんですけどね」
「え?」
「やっぱり、そういうことなんだよな……」

 リオネクスさんの言葉に、私は再び驚くことになった。
 どうやら、彼の家は既に没落してしまっているようだ。それなら、確かに私の疑問は解決する。
 だが、没落というのは、それはそれで驚きだ。それは、とても重大なことであるというのに、彼はまたもサラっと言っている。
 サガードも、それ程驚いていない。彼にとっては、この答えはわかっていたものだったようである。
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