公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

調査4 下のお姉様

 私は、廊下を歩きながら少し考えていた。本当に、このままお兄様やお姉様のことを調べるのは正しいことなのだろうか。
 エルーズお兄様のことを、私は調べたいとまったく思わなかった。その気持ちが湧いてきて、これからの調査のやる気があまり出なくなったのだ。

「一応、あそこにオルティナお姉様はいるけど……」

 私の視線の先には、オルティナお姉様がいる。一応、彼女のことを調べようと思っていたからだ。
 彼女は、二人いる姉の一人である。彼女は、下のお姉様だ。
 ただ、あまり気は進まない。だんだんと、私は兄弟に疑念を抱けなくなってきているのだ。

「あれ? ルネリア?」
「あ、オルティナ、お姉様……」

 そこで、私とオルティナお姉様の目が合った。
 今回、私は別に隠れていない。気が進まなさ過ぎて、とぼとぼと彼女の後ろを歩いていただけだったからだ。
 そのため、別に見つかるのはおかしくない。後ろを向いたら、普通に気づくだろう。

「ルネリア!」
「わあっ!」

 私がそんなことを思っていると、オルティナお姉様が抱きしめてきた。結構距離は離れていたはずだが、一瞬でそれを詰められて、少しびっくりである。
 しかし、オルティナお姉様はいつもこんな感じだ。私を見ると、すぐに抱き着いてくる。それが、お姉様なのだ。

「もういるならいるって、言ってくれればいいのに」
「え、えっと……すみません」
「別に謝らなくてもいいよ……それより、ルネリア、何か元気ない? もしかして、お腹でも痛いの?」
「あ、いえ、そういう訳ではありません」
「そうなの? 何かあるんだったら、お姉ちゃんに言ってよね? 私、ルネリアのためなら、なんでもするから!」

 オルティナお姉様は、はつらつとした笑顔を浮かべていた。その笑顔を見ていると、なんだか元気が湧いてくる。

「あ、なんだかいい顔になったね?」
「え? そうですか?」
「うん、そうだよ。やっぱり、こうやってぎゅっとしているからいいのかな?」
「……そうかもしれませんね」

 オルティナお姉様のおかげで、私にはすっかり活力が戻っていた。
 やっぱり、暗い気持ちばかりではいけない。もっと明るくなるべきだ。

「そうだよね、こうやっていると幸せな気持ちになれるもん。間違いないよ。皆、どうしてこうしないのかな?」
「それは……色々と問題があるからじゃないですか?」
「問題? 何かあるの?」

 私の言葉に、オルティナお姉様は首を傾げていた。
 彼女は、貴族の作法だとかそういうことをまったく気にしない。そのため、こうやって抱き着くこともまったく気にしてはいないのだろう。
 それは、平民だった私にとっては、接しやすいといえる性質だ。貴族としては、少々問題があるのかもしれないが。
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