公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

調査5 上のお兄様

 オルティナお姉様から元気をもらった私は、調査を再開することにした。
 暗い気持ちは吹き飛んだので、やる気が湧いてきた。真実を知るために、今日も私は行動するのだ。

「……よし」

 という訳で、私は今日もとある人の後をつけることにした。
 それは、アルーグお兄様である。私達兄弟の一番上のお兄様だ。

「……今日は、ばれないように」

 私は物陰にしっかりと身を隠している。今日こそは見つからないだろう。あちら側から私は、どうやっても見られないはずだ。

「……そこにいるのは、わかっている。出てきたら、どうだ?」
「え?」

 しかし、そんな私にお兄様はそう話しかけてきた。
 それに、私は驚いた。今日こそは完全に体を隠せている。それなのに、どうして見つかったのだろう。
 以前までと比べて、物陰から相手の様子を窺う回数も減らしていたのに、それでも駄目なのだろうか。なんというか、誰か尾行の方法を私に教えて欲しい。

「アルーグお兄様、どうしてわかったのですか?」
「……ほう。本当にいたのか。言ってみるものだな」
「え?」

 アルーグお兄様が何を言っているか、私には一瞬わからなかった。
 だが、すぐに理解する。もしかして、お兄様はかまをかけていたのだろうか。

「そんな顔をするな……簡単なことだ。お前が妹や弟をつけていたことは聞いていた。故に、俺にもついているのではないかと思ったのだ」
「そ、そんな……」

 私は、お兄様の策略にまんまと引っかかってしまったようだ。それは、なんとも情けない話である。
 でも、流石はアルーグお兄様だと思った。冷静でありながらも、大胆な面もある切れ者。それが、私が彼に抱いている印象だ。
 今回も、その印象通りの行動を彼はしていた。やはり、アルーグお兄様はすごい人なのだ。

「……ふん、それでお前はどうして兄弟をつけたりしているのだ?」
「え? いえ、それは……」
「イルフェアに言った言葉が嘘であることは、既にわかっている。それが本当なら、他の兄弟をつける理由がない」
「うっ……」

 アルーグお兄様は、冷静に私を詰めてきた。それは、とても優しい口調だが、少し怖い。

「お前が何を思っているかはわからない。だが、つけられるというのがあまりいい気持ではない。故に、お前がこれ以上それを続けるというなら、俺も少し強めに注意せざるを得ない」
「そ、それは……」
「……一つアドバイスをしておいてやろう。母上から話を聞け。それで、お前の憂いは晴れるはずだ」
「……え?」

 アルーグお兄様は、それだけ言って去って行った。
 残された私は、困惑していた。その話している内容が、色々と不可思議だったからだ。
 お兄様は、私のことをどこまで理解しているのだろうか。それがわからない。
 さらにわからないは、お母様から話を聞くということだ。一体、それで私の憂いの何が晴れるというのだろうか。
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