公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

もやもやする言葉

「という訳で、私は少しもやっとしたんです」
「確かに!」

 私は、エルーズお兄様の言葉に関して思ったことを、オルティナお姉様に打ち明けることにした。
 既に、時刻は夜である。オルティナお姉様は、今日も私の部屋にやって来たのだ。
 私が今日一日感じていたことを話すと、彼女は大きく頷いてくれた。どうやら、気持ちは同じだったようである。

「迷惑とか、そういうのは嫌だよね。そりゃあ、エルーズお兄様は病気がちだけど、そんなの関係ないってというか……」
「そうですよね」
「うん、これはなんとかしないといけないよね」
「行きますか?」
「うん、行こう!」

 私の言葉に、オルティナお姉様は大きく手を上げてくれた。
 という訳で、私達は早速行動を開始する。私の部屋から出て、とある人物の部屋に向かうのだ。
 オルティナお姉様の理解が早くて、本当に助かった。これで、私は今日感じていたもやもやをやっと晴らすことができそうである。

「エルーズお兄様、入るからね」
「え?」

 しばらく歩いて、私達はエルーズお兄様の部屋までやって来ていた。
 彼の返答も聞かず、オルティナお姉様は部屋の戸を開ける。こういう時の大胆さは流石だ。

「エルーズお兄様、元気?」
「え、えっと……まあ、今日は体調もいい方だよ?」
「それなら歩ける?」
「歩けるけど……」
「それじゃあ、行こう!」
「行くって、どこに?」

 困惑するエルーズお兄様の手を、オルティナお姉様は握って引っ張っていた。
 訳がわからないというような顔をするエルーズお兄様の空いている方の手を私は握る。

「ルネリア? あの、事情を説明して……」
「いいから、来てください」
「ええ……」

 私達は、二人でエルーズお兄様を引っ張っていった。多少混乱しながらも、彼は私達について来てくれる。
 そうやって少し歩いて、私の部屋の前まで来ると、エルーズお兄様はようやく事態を少し飲み込めたのか、納得したような表情になる。

「……もしかして、二人とも朝のことを気にしていたのかな?」
「あ、そこまでわかったんですね?」
「うん……その、あれを言ってから、なんとなくちょっと空気が変わったような気がしたから」

 エルーズお兄様は、自分が失言していたことを理解していたようだ。
 その言葉からして、あの言葉に嫌な思いをしたの私達だけではなかったと私は初めてわかった。どうやら、あの場にいた皆、気持ちは同じだったようである。

「エルーズお兄様、迷惑とかそういうことは言わないでください」
「そうだよ。他に理由があるならともかく、そういうことで私達の誘いを断るのは、駄目なんだからね」
「……ごめん、二人とも。ありがとう」

 私達に対して、エルーズお兄様はゆっくりと頭を下げてきた。わかってもらえたなら、本当によかった。これでもう、エルーズお兄様はあんなことは言わないだろう。

「……本当はね、オルティナの誘いに乗ってみたかったんだ。普通の人みたいに、二人と遊べたらいいなって」
「それなら、そうしましょうよ」
「うん、そうだね」

 私とオルティナお姉様に引っ張られて、エルーズお兄様は私の部屋に入っていく。
 その表情は笑顔だった。それが私達は、ただただ嬉しかった。
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