魔力なし悪役令嬢の"婚約破棄"後は、楽しい魔法と美味しいご飯があふれている。

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 あまりの出来事に頭が追い付かず、しばらく呆けた。

 ガット君なんて「穴」「穴が!」と呟き、腰を抜かしている。……先輩にもらった杖、一度だけ火魔法のファイアが打てる杖。

 その杖からでた炎は、私かも捕まっている牢屋だけではなく、部屋の壁まで穴を開けた。

「ね、ね、姉さん、すごいっス」
 
「すごいね、やったのは私じゃないけど……ガット君、早く逃げよう!」

「はい、今の爆発音で誰かこの部屋に来てますっス」

 いま、部屋の入り口から逃げでも騎士に捕まる。どこから逃げる、あの扉の先はバルコニー?

「もうすぐ来ます! どうしましょう、姉さん」
「大丈夫よ、行くわよガット君!」

「へっ、ええええぇ!」

 先輩から貰ったワンピースも着ている、バルコニーから飛び降りると決め、カバンを肩にかけ、ビビるガット君を抱っこした。

「ここから飛び降りるから、怖かったら目を瞑っていてね」
 
「わかりました、しっかり目をつぶりますっス」

 よし、躊躇している場合じゃない「行くぞ!」と、手すりを超えてバルコニーから飛び降りた。うわっ…まえより高い……お、お願い、あの日のように翼をください! 私のその願いは届き、背中に翼が生え緩やかに地上までおりれた。

 暗闇に隠れて、あがった息を整える。

「はぁ、はぁ――先輩を信じていないわけないけど。高いとこらから飛び降りるのは――勇気がいるわね」

「当たり前っス! 相当の勇気がいるっス。ルーチェ姉さんは頑張ったっス」

 癒されるモフモフのガット君。私ひとりだったら、こんなことできなかった、君が来てくれてよかった。

「いない、ルーチェ嬢はどこにいった?」
「この辺りを探せ!」

 ここに、いつまでもいられない。いま上では――私がいなくなったと……複数の声が聞こえてくる。

 ここは? 中庭? さっき、イアンはカロール殿下と結婚式を挙げると言っていたから……王城の西奥に立つ教会――そこにいるわ)

 身を潜め、明かりの少ないところを選び、ガット君といっしょに西奥の教会へと移動を始めた。
 
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