魔力なし悪役令嬢の"婚約破棄"後は、楽しい魔法と美味しいご飯があふれている。

2

 返事を返さず準備をしていた。扉の前のメイドがもう一扉を叩き。

「ルーチェお嬢様、応接間で旦那様がお呼びです。至急お越しください」

 と、告げた。
 応接間で、お父様が呼んでいる。

「……いやよ、私はいかない。お父様に"応接間には行きません"とお伝えてください」

「で、ですが………」

 ――お父様にどんなことをしても、私を連れて来いと言われたのね。

「行かないったら行かない。そう、お父様に伝えて!」

「……はい、かしこまりました」

 いま、メイドがそう伝えれば絶対にお父様は部屋にくる。自分で動かせる家具を扉まえに移動させて、すぐには扉が開かないようにした。

 これで、逃げ道はバルコニーしかない。
 私はクッションの代わりに、バルコニーから自分の布団を下に落として。

 さて、いくわよ。
 平気よ。下は芝生だもの。


「「ルーチェ!」」


 私の名前を叫び、部屋に走ってくる複数の足音と。
 ドン! ドンドンドン、ドンドンドンと、乱暴に部屋の扉が叩かれ、大声で「開けろ!」と怒鳴り、お父様はドアノブを乱暴に回した。

「ルーチェ、何をしている? 部屋から早く出てきなさい!」

「いやよ、出ない。いま部屋を出たらカロール殿下に婚約破棄されたと言って、またぶつのでしょう?」

「婚約破棄? 叩くなんて、そんなことはしない。カロール殿下がお前を王城に呼んでいる。婚約破棄をなかったことに……」

「いやよ!」

 お父様の話を最後まで聞きたくなくて、バルコニーからカバンを持って私は飛び降りた。

「………ヒィイイ!」

 思っていたよりも高く、落ちるスピードも速い……地面に落ちると思った瞬間。ワンピースが光り、私の背中に真っ白い翼が生え、ふわりと庭におろしてくれた。

(羽? ……これも、先輩の魔法?)

 も、もう一度見たい! ……今はダメよ。そんなことをしている余裕がない、早くこの屋敷を出ていかないといけない。ちょうど、私がバルコニーから庭に飛び降りたあと。すぐにお父様たちは部屋の扉を蹴破り、ランタンを持ってバルコニーから下を覗いた。

「ルーチェ? どこにいった戻ってきなさい。カロール殿下が婚約破棄は間違いだっといっているんだ、戻りなさい」


(え? カロール殿下が婚約破棄をなかったことにするの?)


「…………っ」

 乙女ゲームに似ている世界で、自分が悪役令嬢で婚約破棄されるとわかっていたが、私はカロール殿下に恋をした。学園で何度も彼を振り向かせようと"いじめではなく"自分を磨き、料理、刺繍、礼儀、仕草、たくさん努力をした。

 でも、彼は最後にリリーナを選んだのだ。

『カロール様………』

 二人が仲良く寄り添う姿をみて心が痛み、たくさん泣いたし、苦しんで、ようやくこの恋をあきらめられた……

(今更、婚約破棄をなかったことに? あなたが私に言ったことを簡単に撤回しないでよ。絶対に、あなたの元になんて戻るものですか……さようなら)
 
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