君の隣で歌いたい。
「沢里がちょっと行き過ぎたミーハーなのは前からじゃん」
「み、ミーハーって……え、もしかして前からキショいって思ってた? え?」
「別にキショくはないけど……」
「あーもうやめやめ! 俺傷つきそー」
憧れすぎるとはどういった状態のことか。初めて言われた言葉にいまいちピンと来ない。
けれど真剣な沢里の目に射抜かれて、どきりとした。
ひとつだけ言えることは、誰かと楽しそうに歌う姿を見せることはないということ。
「まあ安心してよ。それだけはないから」
「――もう誰とも歌わないってやつ?」
「そう」
「でも俺とは歌ってくれた」
「んー少しだけどね」
誤魔化すとまたむすっとしてしまう沢里に苦笑しながら電子ピアノを鳴らす。
パソコンとマイクの接続を確認して、ヘッドホンを装着した沢里を促した。
「それじゃあ、よろしく」
作曲を終えてからも録音、編集作業はそれなりの日数を要する。SNSに公開できるのはまだ先になるだろう。
その間にきっと何度も録音した沢里の歌声を聴くことになる。納得のいくまで繰り返す必要がある作業だ。
パソコン用のブルーライト対策眼鏡をかけて挑む。
しばらくして録音は問題なく済んだ。コードに合わせて確認し、指でOKを出すと沢里はほっとしたような表情をする。