君の隣で歌いたい。
真正面にくるsawaさんの派手なアロハシャツに思わず横にずれようとすると、がしりと両肩を掴まれる。
「娘よ、次は僕のブレスに合わせて歌うんだ」
「へ?」
「ワン、ツー」
突然の合図に目を白黒させていると、沢里が前奏を弾き始める。
肩を掴まれたまま、sawaさんの顔を見るしかない状況で歌い始める。
sawaさんはわざと呼吸が分かりやすいように歌い、それにつられて私も同じ場所で息をする。
がっちりと合された視線を外すことができない。
今私はsawaさんの不思議な力で歌わされている。
気が付くとさくらさくらを全て歌い終えていた。息もれすることなく、呼吸に喘ぐこともなく、他人と一曲歌いきったのだ。
呆然とする私にsawaさんが言い放った。
「んー実に単純! 余計なことを考えずに誰かの呼吸に合わせればよし!」
「あ……」
その時私は歌っている最中はsawaさんの濃すぎる顔面しか見ていなかったことに気付く。
その強烈なインパクトに、悪い妄想が吹き飛ばされていたのだ。
「マジ?」
これには沢里も唖然としている。