君の隣で歌いたい。
この二人は面識がなかっただろうか? なかったかもしれない。
一応戸籍上の繋がりはあるはずだが、母の再婚時には柾輝くんはもう家を出ていた。
それから一度も母と会っていないことを考えると、柾輝くんと透流さんは正真正銘今現在が初対面ということになる。
そして私の予想では、お互い合わないタイプだ。
「僕は凛夏の義兄です。こんな時間に義妹となにを?」
「は? …………あーそういうこと」
じろりと透流さんが柾輝くんを睨み付ける。
柾輝くんはなにかを察したように頭に手をやり、伝票片手に席を立った。
「あ、あのっ透流さん! この人は私の――っ」
不意に言葉に詰まる。
もしも透流さんに私たち兄妹が会っていることを母に言いつけられてしまったら?
そして今後柾輝くんに会うことができなくなってしまったら?