夫婦ごっこ
 義昭の声に明るさが戻ってほっとした。まだ完全に身を預けることはできないが、奈央はもう少しだけ義昭のほうへ寄って、自分の言葉が嘘ではないと示してみた。

 義昭はまた優しく奈央の頭を撫ではじめたから、きっと奈央の気持ちは伝わったのだろう。そのまま義昭が与えてくれる心地よさに浸ってみる。そうすれば、奈央は少しずつその体から力を抜いていくことができた。

 けれど、さすがにすぐには眠ることはできなくて、先に眠った義昭の呼吸を感じながら、奈央はこれから自分がすべきことをずっと考えていた。

 義昭を好きだという自覚があるが、修平への想いがなくなってしまったかというとそれはわからない。自分の気持ちをしっかりと見つめ直すべきだと思った。

 一時の感情で義昭に気持ちが向いているだけなのか、本当に心変わりしてしまったのか、もしくは二人ともに気がある状態なのか。最後の状態だけは浮気心があるようでものすごく嫌だが、ちゃんと自分の今の状態を正確に知っておくべきだろう。

 だが、それにはこれまで避けていたところへ自ら赴かなければならない。また苦しい思いをすることになるかもしれない。それでも、それも覚悟の上で確かめにいこうと奈央は一人決意した。
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