夫婦ごっこ
 奈央は自宅に帰りながら、ずっと胸の疼きと格闘していた。修平と由紀に会って奈央はもう強く自覚してしまった。義昭のことが本当に好きなのだと。

 修平への気持ちが完全に消え失せたわけではなかったが、義昭を想う気持ちのほうが遥かに大きくなっていた。義昭のことばかりが思い浮かんだ。奈央はもうその心を義昭に奪われてしまったらしい。

 義昭を好きになれたことが本当に嬉しくてたまらない。奈央のことをあんなにも大切にしてくれる人を想うことができて本当に幸せだ。


 でも、奈央はもう一つの向き合わなければならないある事実が存在することに気づきはじめていた。自分の変化にいっぱいいっぱいでその重大な事実からは目を背けていたが、修平との会話で薄っすらと脳裏をよぎってしまった。奈央と同じく義昭にも人に言えない想いがあるのだということを。

 きっと本当は一番に考えなければならないことだろう。でも、それは一番向き合いたくないもので、奈央は結局そのことには見ない振りをしてただ義昭への想いに浸った。


 仕事から帰ってきた義昭を迎えてみれば、奈央の胸は大きく高鳴った。彼が好きだと心が叫んでいる。ここまで来たらもう後戻りはできない。きっと奈央は義昭を好きでいることをやめられない。苦しい思いをすることになったとしても、きっと奈央は義昭に想いを寄せ続けることだろう。
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