夫婦ごっこ
約束の日、慶子の家に行くとそこにいたのは慶子とその夫の敦也の二人で、子供たちの姿はなかった。二人に顔を合わせれば、やはり義昭は今もつらいだろうかと義昭の表情をそっと窺ってみたが、義昭はただ優しい笑みを浮かべているだけだった。自分の想いを隠すためにわざとそうしているのかもしれない。そう考えると奈央のほうが苦しくなった。
「義昭くんも奈央ちゃんも来てくれてありがとうね」
「いえ、こちらこそご招待ありがとうございます」
「奈央ちゃんはここ来るの初めてだよね」
「そうですね。意外と家から近くて驚きました」
慶子の家には電車一本でたどり着けた。奈央が普段乗らない路線だから知らなかったが、たったの三駅の距離だった。慶子たちが奈央と義昭の家に来たことはないし、義昭が慶子たちのところへ行くことも全然ないから、こんなに気軽に行き来できる距離とは思わなかった。
「確か電車一本で行けたよね。義昭くんと喧嘩したらいつでも逃げてきていいよ」
「え、いえいえ。義昭さんは優しいので、喧嘩になんてならないですよ。義昭さんに怒ることなんて絶対ないです」
冗談だとわかっているが、奈央が義昭に怒ることなんてあるはずないから、奈央はすぐさま否定の言葉を述べていた。義昭はいつも優しくしてくれるから、彼に怒ったことは一度もない。それどころかたくさんたくさん救われてきたのだ。
「奈央さん、それは僕もだよ。奈央さんこそ優しいからね。奈央さんはいつも僕を幸せにしてくれる」
慶子たちに見せるための演技なのか、それともただ本心で言ってくれたのかわからないが、人前でこうもストレートに言われると照れずにいられない。義昭以外にこんなふうに大事にされたことはないから、それを軽く受け流すような技は持ち合わせていない。本当の夫婦がどんな感じかわからないが、こんなことで照れてはいけないだろうと思うのに、奈央はどうにも照れを隠せそうになくて、慶子が出してくれたお茶を飲んで必死に誤魔化した。
「義昭くんも奈央ちゃんも来てくれてありがとうね」
「いえ、こちらこそご招待ありがとうございます」
「奈央ちゃんはここ来るの初めてだよね」
「そうですね。意外と家から近くて驚きました」
慶子の家には電車一本でたどり着けた。奈央が普段乗らない路線だから知らなかったが、たったの三駅の距離だった。慶子たちが奈央と義昭の家に来たことはないし、義昭が慶子たちのところへ行くことも全然ないから、こんなに気軽に行き来できる距離とは思わなかった。
「確か電車一本で行けたよね。義昭くんと喧嘩したらいつでも逃げてきていいよ」
「え、いえいえ。義昭さんは優しいので、喧嘩になんてならないですよ。義昭さんに怒ることなんて絶対ないです」
冗談だとわかっているが、奈央が義昭に怒ることなんてあるはずないから、奈央はすぐさま否定の言葉を述べていた。義昭はいつも優しくしてくれるから、彼に怒ったことは一度もない。それどころかたくさんたくさん救われてきたのだ。
「奈央さん、それは僕もだよ。奈央さんこそ優しいからね。奈央さんはいつも僕を幸せにしてくれる」
慶子たちに見せるための演技なのか、それともただ本心で言ってくれたのかわからないが、人前でこうもストレートに言われると照れずにいられない。義昭以外にこんなふうに大事にされたことはないから、それを軽く受け流すような技は持ち合わせていない。本当の夫婦がどんな感じかわからないが、こんなことで照れてはいけないだろうと思うのに、奈央はどうにも照れを隠せそうになくて、慶子が出してくれたお茶を飲んで必死に誤魔化した。