夫婦ごっこ
「奈央さん、はっきり言っていいよ。嫌なことがあるなら言葉にして? 奈央さんを傷つけたくないから」
どこまでも優しい義昭の言葉に胸が痛くなる。そして、自分は彼の反応を見誤っていたのかもしれないと奈央は気づいた。
自分の想いを口にすれば、そばにいさせてもらえないかもしれないなんて思っていたけれど、きっとそうではない。奈央につらい思いをさせないために、義昭はきっと自分のことは置いておいて、奈央のことを優先するはずだ。奈央が自分の想いを口にしたら、奈央のために自分の気持ちは覆い隠して、できるかぎりで奈央に尽くしてくれるに違いない。義昭はそういう人だ。
なぜそんな簡単なことにも気づかなかったのか。自分のことばかりで本当に嫌になる。でも、もしもその考えが正しいなら、奈央がその想いを口にすると同時に義昭はもう本音で話せる人がいなくなってしまうということだ。彼はまた一人になってしまうのだ。
そのことに気づいたら、余計に本当のことは言えないと思った。義昭ばかりにつらい思いをさせる道なんて選択できるはずがない。結局、奈央はまた謝罪の言葉を口にするだけで、本当のことは何も言葉にできなかった。
「……ごめんなさい」
「どうして謝るの? 奈央さんが謝ることなんてないでしょ? やっぱり二人でいるのが嫌になった?」
「嫌じゃない」
「でも、僕と距離取りたいって思ってるでしょ? 奈央さんがそうしたいなら、そう言っていいよ」
「違う。思ってない。そんなこと思ってない」
奈央は勢いよく否定していた。そんな誤解はしてほしくない。奈央は義昭と距離を取りたいのではない。近づけないのだ。近づいたら全部溢れだしてしまいそうで近づけない。ここまで好きになってしまったのに、離れたいわけがない。でも、その想いは口にできない。だから、奈央はただ否定することしかできなかった。
どこまでも優しい義昭の言葉に胸が痛くなる。そして、自分は彼の反応を見誤っていたのかもしれないと奈央は気づいた。
自分の想いを口にすれば、そばにいさせてもらえないかもしれないなんて思っていたけれど、きっとそうではない。奈央につらい思いをさせないために、義昭はきっと自分のことは置いておいて、奈央のことを優先するはずだ。奈央が自分の想いを口にしたら、奈央のために自分の気持ちは覆い隠して、できるかぎりで奈央に尽くしてくれるに違いない。義昭はそういう人だ。
なぜそんな簡単なことにも気づかなかったのか。自分のことばかりで本当に嫌になる。でも、もしもその考えが正しいなら、奈央がその想いを口にすると同時に義昭はもう本音で話せる人がいなくなってしまうということだ。彼はまた一人になってしまうのだ。
そのことに気づいたら、余計に本当のことは言えないと思った。義昭ばかりにつらい思いをさせる道なんて選択できるはずがない。結局、奈央はまた謝罪の言葉を口にするだけで、本当のことは何も言葉にできなかった。
「……ごめんなさい」
「どうして謝るの? 奈央さんが謝ることなんてないでしょ? やっぱり二人でいるのが嫌になった?」
「嫌じゃない」
「でも、僕と距離取りたいって思ってるでしょ? 奈央さんがそうしたいなら、そう言っていいよ」
「違う。思ってない。そんなこと思ってない」
奈央は勢いよく否定していた。そんな誤解はしてほしくない。奈央は義昭と距離を取りたいのではない。近づけないのだ。近づいたら全部溢れだしてしまいそうで近づけない。ここまで好きになってしまったのに、離れたいわけがない。でも、その想いは口にできない。だから、奈央はただ否定することしかできなかった。