夫婦ごっこ
 ゆめのその言葉に、奈央はまるで自分のダメなところを指摘されているような気がした。奈央は自分にも義昭にも嘘をついているのだと気づかされた。義昭の態度を決めつけ、自分の気持ちを隠すことで自分にも義昭にも嘘をついている。このまま自分の気持ちを隠していれば、奈央はずっと義昭を騙し続けることになるということだ。そんなこと続けていいわけがない。嘘をつくのはルール違反だ。

 ゆめは三回振られてなお前に進もうとしているのに、自分は一回すらできていなくて本当に情けない。ゆめを見倣うべきだ。もしかしたらアルコールのせいで気が昂っているのかもしれないが、奈央はゆめの前向きな姿を目にして強く勇気づけられたらしい。ゆめの言う通り自分の気持ちに嘘はつかずにやってみようと半ば勢いで決意していた。

「……そうだね。うん、その通りだね。ゆめちゃん、頑張れ!」
「はい!」

 その頑張れは自分に向かって言った言葉だったのかもしれない。せっかくの決意が薄れてしまわないよう、自分を奮い立たせたかったのだ。

 本当はちゃんと時間を取って落ち着いた状態で義昭と話し合うべきなのかもしれない。でも、冷静になってしまえばもう二度と言えなくなりそうな気がして、奈央はもう今日全部言ってしまおうと半分やけくその勢いで自分を鼓舞し、飲み会終了から自宅に帰りつくまでの間もどうにかその決意を保っていた。
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