夫婦ごっこ
「にしてもゆめはすごいね。三回も振られてよくやるわ」
「だって、三回とも『よく知らないから』って言われて振られたんですよ? そんなの諦められるわけないじゃないですか」
「いや、それでもなかなかいけないでしょ、普通は」
「でも、好きなのって自分じゃどうしようもないじゃないですか。振られたからって好きじゃなくなるわけじゃないですもん。だったらもう自分に正直に納得いくまでやるしかないですよ」

 ゆめのこの活力はいったいどこから湧いてきているのだろうか。相手の反応が怖くはないのだろうか。奈央は一人で想像して怖がって逃げてばかりいるのに、ゆめは堂々と立ち向かっている。本当にゆめが眩しくて仕方ない。どうすれば自分もゆめのようになれるだろうかなんて考えていれば、頭の中に浮かんだことがそのまま口から漏れ出ていた。

「……ゆめちゃんは相手の人に嫌われたらどうしようとか、迷惑かけたらどうしようって不安にはならないの?」
「うーん、そういうこと思わなくはないですよ? でも、どうしようもない理由があるならともかく、そうじゃないならやってみないとわからないじゃないですか。何もしないで決めつけて、自分の気持ち押し込めるなんてしたくないんです。自分の気持ちに嘘ついているみたいで嫌なんですよ。もしそれで嫌われちゃったら、そのときはいっぱい泣いて、また次の恋を見つければいいかなって思ってます」

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