夫婦ごっこ
「義昭さんもそういうことしたいって思うんだ」
「思うよ。好きな人には触れたい。奈央さんといつだって触れ合いたい」
「本当?」
「本当だよ」
「私に触れたい?」
「触れたい。奈央さん、誤解がないようにはっきり言っておく。僕はね、奈央さんを抱きたいと思ってるよ。いずれは奈央さんとの子供も欲しい。奈央さんとそういう関係だって思われても僕は何も困らないからね? もちろん奈央さんの気持ちが大事だから無理にするつもりはない。でも、僕がそういう気持ちだってことは覚えておいてほしい」

 明確な欲望をぶつけられて奈央は強く心が震えた。どうしようもないほどの喜びが身体中に満ちていく。求めてもらえたことが嬉しくてたまらない。どうやらあのときのことが思った以上に引っかかっていたのだろう。きちんと言葉にしてもらって、奈央は深い安心感も得ていた。今はもう奈央の胸には期待ばかりが渦巻いている。

「本当に? 私としてくれるの?」
「僕が奈央さんとしたいんだよ」
「じゃあ、して?」

 勝手にその言葉が滑り落ちた。義昭の全部を求めていいのなら、もう今すぐにでも欲しいと思ってしまった。もう義昭への想いが膨らんで止まらないのだ。自分の中に渦巻くこの激しい想いを義昭に受け止めてもらいたい。自分も義昭の想いを全身で受け止めたい。ここまできたらもう我慢なんてできない。今二人の間には何の障害もないのだ。両想いで、すでに結婚もしていて、互いにそれを望んでいるのに、そこに至らない理由があるはずもない。奈央はどうにもならない自分の欲をぶつけるように義昭を熱く見つめた。
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