夫婦ごっこ
「うん、したい、今から」
「じゃあ、必要なもの買ってくるからちょっと待っててくれる?」
「え?」
「奈央さんとすぐにそうなるって思ってなかったから避妊具の準備がないんだ。すぐに買って戻ってくるから奈央さんは待ってて?」

 自分には縁遠いことだったし、義昭を求めることでいっぱいで、そこまで頭が回っていなかった。冷静でいてくれた義昭に感謝しなければならない。結婚しているし、仮に子供ができても大きく困りはしないだろうが、さすがに無鉄砲が過ぎる。自分があまりにも暴走していたのだと気づいて恥ずかしくなってしまった。

「えっと……」
「いるでしょ? 子供のことはちゃんと話し合ってから決めたいし、それに奈央さんと二人の時間ももうしばらく楽しみたいからね」
「……うん。ごめん、頭沸騰して何も考えてなかった」
「ふふ、そこまで求めてもらえて嬉しいよ。じゃあ、冷静になった頭でもう一度考えてみて? 本当にこのまましてもいい?」
「いい。義昭さんが嫌じゃなかったら」
「僕が嫌なわけないよ。奈央さんがいいならもう止めない。じゃあ、すぐ戻ってくるから、いい子で待ってて? お風呂入りたかったら入っててもいいから」
「わかった」

 義昭は奈央を膝から下ろすとすぐに出かけていった。奈央もそれからすぐに風呂に入ってしっかりと体を磨きつつも、できるだけ急いで上がったのだが、義昭が帰ってくるほうが早かったらしい。風呂から上がると、自分も入ってくるという義昭とすれ違った。

 寝室で待っていてくれと言う義昭の言葉に従い、先に寝室に入ると義昭の買ってきたものが目に入ってドクンと心臓が大きく音を立てた。これから義昭とその行為に及ぶのかと思うと期待と緊張で鼓動がどんどん速まっていく。義昭のベッドに座り、暴れる鼓動を押さえるように胸に手を当てて待っていれば、義昭はそう時間を置かずに寝室へとやってきた。
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