夫婦ごっこ
 義昭は最初から最後までずっと優しかったけれど、彼がその本領を発揮したのは行為の後だった。奈央に腕枕をしながら、優しく奈央の頭を撫で、奈央を愛でるように顔中に口づけを落としてくる。甘くて甘くてもう義昭の腕の中で溶けてしまいそうだ。

 義昭の甘さにあてられて、義昭を好きな気持ちもさらに膨らんでいく。指数関数的に増大して止まらない。もうこのままでは世界を覆いつくしてしまいそうだ。

「義昭さん」
「ん?」
「どうしよう」
「うん?」
「好きが膨らんで止まらないの。もうね、この爪の先までいっぱいいっぱいなのに、まだ止まらない。どんどん溢れだしてく」
「奈央さん、かわいい。そんなに僕が好き?」
「好き。義昭さんがいないともう息もできなくなりそう」
「じゃあ、ずっと僕の隣にいればいい。僕も奈央さんが好きで好きで仕方ないから、奈央さんのことたくさん愛してあげる。一生奈央さんを愛するよ」
「私も。義昭さんのこといっぱい愛したい」
「うん。一途な僕らが両想いになったんだから、もう離れられないね」
「ずっと一緒?」
「そうだね。ずっと一緒。ずっと愛し合って暮らしていくんだよ」

 この先ずっと互いに想い合って暮らしていけるなんて何という幸福だろうか。もう一方通行じゃない。想って想われて、愛して愛されての双方向の関係は奈央がずっと憧れ続けたものだ。喉から手が出るほど欲しかった。欲しくて欲しくて、でも手に入らなかった。奈央はそれをようやく手に入れたのだ。
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