夫婦ごっこ
自宅に帰りつけば、義昭がいつもの優しい声で迎えてくれた。
「奈央さん、おかえり」
普段ならそれだけでとても心が温かくなるのに、今日の奈央の心は冷え切りすぎてちっとも温まってくれない。ただ「ただいま」と絞り出すだけで、何も取り繕うことができなかった。だから、奈央が普通でないことはすぐに義昭に伝わったのだろう。
「奈央さん、こっちおいで?」
優しく呼び寄せてくれるその声に従い、義昭のすぐそばに座り込めば、義昭は奈央のことをとても心配そうに窺ってきた。
「何かあった?」
その優しい声音に促され、全部を吐き出してしまいたくなるが、口を開いてみても何の言葉も出てこなかった。今の苦しさをどうにかしたいのに何もできない。義昭の目を見て訴えるので精いっぱいだった。
「ごめん、これじゃあ言えないね。聞き方変えよう。今苦しい?」
「苦しい」
「じゃあ、その苦しいを僕に吐き出せる?」
「怖い……口にするのが怖い」
声にして出してしまえばすべてが真実になってしまうようで怖い。自分はやはり醜い人間なのだとそう強く自覚してしまいそうなのだ。
必死に姉としての自分を保ってきたのに、こんな最低な想いを外に吐き出してしまえば、もう自分は由紀の姉である資格がなくなってしまうんじゃないかという気がしてとても怖い。大好きな妹に新たな命が宿ったことを喜べないなんて、人として欠陥があるとしか思えない。自分がそんな人間だと思い知らされるのは嫌だ。
そして、何より義昭からの侮蔑が怖かった。
「奈央さん、おかえり」
普段ならそれだけでとても心が温かくなるのに、今日の奈央の心は冷え切りすぎてちっとも温まってくれない。ただ「ただいま」と絞り出すだけで、何も取り繕うことができなかった。だから、奈央が普通でないことはすぐに義昭に伝わったのだろう。
「奈央さん、こっちおいで?」
優しく呼び寄せてくれるその声に従い、義昭のすぐそばに座り込めば、義昭は奈央のことをとても心配そうに窺ってきた。
「何かあった?」
その優しい声音に促され、全部を吐き出してしまいたくなるが、口を開いてみても何の言葉も出てこなかった。今の苦しさをどうにかしたいのに何もできない。義昭の目を見て訴えるので精いっぱいだった。
「ごめん、これじゃあ言えないね。聞き方変えよう。今苦しい?」
「苦しい」
「じゃあ、その苦しいを僕に吐き出せる?」
「怖い……口にするのが怖い」
声にして出してしまえばすべてが真実になってしまうようで怖い。自分はやはり醜い人間なのだとそう強く自覚してしまいそうなのだ。
必死に姉としての自分を保ってきたのに、こんな最低な想いを外に吐き出してしまえば、もう自分は由紀の姉である資格がなくなってしまうんじゃないかという気がしてとても怖い。大好きな妹に新たな命が宿ったことを喜べないなんて、人として欠陥があるとしか思えない。自分がそんな人間だと思い知らされるのは嫌だ。
そして、何より義昭からの侮蔑が怖かった。