夫婦ごっこ
 そうして奈央が義昭に甘えるようになってから一ヶ月くらいが経った頃、奈央は些細なことから自分のある変化に気づくこととなった。


「義昭さん。今日はこれ一緒にやらない?」

 いつものように義昭とパズルを解いて過ごそうと思った奈央は、いつもよりも大きいサイズのそれを義昭に見せていた。そのジャンボパズルは場所も取るし、時間がかかりそうだからと後回しにしていたものだ。今日はこれを二人で一緒に解いてみようと思っていた。

「ずっと後回しにしてたやつだね。これはなかなか骨が折れそうだね」
「うん。でも、その分楽しいと思う」
「よし、じゃあ、二人で頑張ろうか」

 二人で両端から取り組みはじめた。結構なサイズだから、二人でやってもなかなか埋まらない。でも、その手ごわさが面白い。二人とも一切しゃべらずに黙々と解き進めていたのだが、一時間くらいしたところで奈央は重大なミスを犯しているのに気づいてしまった。どうやってもルール通りに書き込めないところが出てきたのだ。どこかで間違ってしまったらしい。

「あれ……やば、矛盾してる」
「どこ?」
「ここ。どこで間違ったんだろ……」

 そのまま二人でしばらく矛盾が起きている個所を確認していると、義昭が先にその間違いに気づいてくれた。

「あ、これのせいじゃない?」
「あ、本当だ! さすが義昭さん」

 義昭は本当に頭の切れがいい。奈央が詰まっているといつも助言してくれる。義昭といるとなんだか自分も賢くなっていくような気がして本当に楽しい。奈央は義昭にお礼を言って間違えていたところを修正するとまたすぐにパズルへと向き直った。
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