夫婦ごっこ
 今日のお出かけの目的地はショッピングモールだ。できるだけ人が多い場所のほうが緊張しないだろうし、買い物していれば余計なことを考えなくて済むから、きっといい気分転換になるだろうと選んだ。実際に到着してみれば、多くの人で賑わっていて、それだけで少し平常心を取り戻せた。

 いろいろなジャンルの店舗が入っているから、本当なら義昭も楽しめる店を一緒に見てまわるべきなのだろうが、今はとにかく自分のペースをちゃんと保っていたくて、奈央は先に自分のお気に入りの店へ向かうことにした。

「義昭さん。私、あの店行ってきていい? 結構長い時間見てまわると思うし、義昭さんも好きなところ見にいってていいから」
「いいけど、僕も一緒に行っていい? 奈央さんの買い物に付き合うほうが面白そうだから」

 奈央が入ろうとしているのはレディース服を取り扱っているアパレルショップだ。さすがに、義昭をそこに付き合わせるのはどうかと思ってああ言ったのだが、義昭は一緒のほうがいいらしい。まさか義昭がその選択をするとは思っていなかったから、奈央は一瞬戸惑ってしまった。ここに二人で入って果たして集中して買い物できるだろうかと少し心配になったのだ。でも、さすがに買い物中に義昭を変に意識することもないだろうとそれを断ることはしなかった。

「えーと、じゃあ、もし飽きたら言ってね?」
「うん、わかったよ」
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