妖帝と結ぶは最愛の契り
「父さんと私はまあ仕方ないなとしか思わなかったけれど、母さんは違ったわ。ずっと泣きながら『ごめんなさい』って謝り続けて、病んでしまった」
「っ!」

(母さんが?)

「その母さんの世話を私がしているのよ? どうして私がそんなことをしなきゃならないのかしら。姉さんが原因なんだから、姉さんが世話をすればいいのよ」

 父に続いて母のことを語る春音の様子もうんざりといった様子で、あれほど可愛がられていたというのに母を労わる様子が感じられない。
 父と春音は似ている。
 昔から度々思っていたが、ここまで家族の情に薄いとは……。

「だそうだ。そういうわけだからお前はこの者達に引き渡す」

 軽く呆れた様子で告げた碧雲は、美鶴の腕を強く引き二人の方へ差し出した。
 それを受け取る様に、今度は父が反対側の腕を掴む。
 碧雲以上に容赦のない力で引かれた。

「いっつ」

 その強さに、思わず顔を歪める。
 だが容赦がないのは手の力だけではなかった。

「その腹の子を無くしてから連れて行きたかったが、仕方ないな。碧雲様の言う通り生まれてから殺すしかない」
「なっ⁉」

 あまりな言葉に絶句する。
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