姐さんって、呼ばないで
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翌々日に期末考査試験初日を迎える土曜日の二十時過ぎ。
紙爆弾(怪文書)の謎解きに苦戦している仁は、仕事の合間に思い当たる人物を書き出していた。

「失礼しやす。兄貴、組に姐さんが」
「……小春が?」
「はい。兄貴が戻るまで帰らないと仰ってるようで」
「……」

桐生組が経営している建設会社の専務室に慌てて入って来た鉄。
組の者から連絡があり、小春が断固として仁に会いたいと言っているらしい。

「分かった」

机の上の書類やパソコンを片付け、メモした紙をジャケットのポケットにしまう。

今週は一日も登校していなかったこともあり、白黒はっきりさせたい性格の小春の堪忍袋の緒が切れたと悟ったのだ。
仁は本宅へと戻る車内で小春にメールを送る。
『あと五分で帰るから』と。

「鉄、家に着いたら今日はもういいから、試験勉強でもしとけ」
「はい、ありがとうございやす」

鉄も桐生組の屋敷に住んでいる。
鉄の他にも多くの者が生活していて、呼び出し一つですぐに飛んでいくのが鉄則。
多くの傘下を従えている桐生組は極道の中では『本家』と呼ばれていて、そのヒエラルキーのトップが組長と若頭である仁だ。

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