姐さんって、呼ばないで


「ここは?」
「俺たちの新居にと、準備した家」

バッティングセンターの帰りにお洒落なカフェでお茶して、その足で辿り着いたのは、低層階の高級マンション。
組から歩いて十分ほどの距離にある。

オートロックはもちろんのこと、駐輪場や駐車場の防犯も完璧。
エントランスからエレベーターホールへと続く空間は、高級ホテルのスイートを彷彿とさせるラグジュアリー感がある。

「ここが俺らの家だよ」

ドラマや映画に出てくるような洗練されたマンション。
内見するだけでも緊張してしまいそうな物件なのに、『俺ら』という響きが鼓動に作用しているようだ。
玄関ドアが開かれ、心臓が煩く騒ぎ立てる。

「お邪魔します」
「自分の(うち)なのに?」

クスっと笑う仁さん。
きっとここにも、私は何度も来ていたのだろう。

広々としたリビングはホワイトオーク柄で、LDKが一体化している。
ナチュラルモダンな雰囲気が凄く美麗で、芸能人や著名人が住んでてもおかしくない夢の空間だ。

「あっ……」

リビングのあちこちに飾られたフォトフレーム。
私と仁さんが幸せそうな笑みを浮かべたツーショット写真が至る所に飾られていた。

本当に恋人同士だったんだ。
許婚だから、婚約者と言うべきか。

幼い頃からのツーショットが沢山あり、二人で過ごして来た時間が窺える。

「ごめん、見たくなかったよな」
「……いえ、そんなことないですよ」

組の誰かが撮ったのか、仁さんが私の頬にキスしてる写真がある。

「他の部屋も見るか?」
「……はい」

彼に案内され、浴室や書斎、ゲストルームや子供部屋などを見て廻り、最後に寝室へと。

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