姐さんって、呼ばないで
夏の想い出、ビーチパラソル
「小春~、準備できたか?」
「はーい、今行きます!」
八月上旬。
朝六時の時点で気温二十七度。
今日も暑くなりそうだ。
大きめのバッグを手にして部屋から出て来た小春。
珍しくポニーテールにしていて、歩く度にふわりと髪が揺れる。
今日は鉄も含め、クラスメイトと海水浴に行くことになっていて、小春は数日前から大はしゃぎ。
「姐さん、荷物持つっす」
「わっ、ありがとうございます」
組の車数台を手配し、待ち合わせの駅前へと向かった。
*
「小春ちゃん」
「ん?」
「(桐生組の人、イケメン揃いじゃないっ!)ね♪」
海へと向かう車内で、菊川が小春に耳打ちしてる。
けれど、意外と声は漏れているもので、俺にも聞こえて来た。
「けど…(私はやっぱり手嶋さんが一番かなぁ♪)」
へぇ~。
菊川は鉄がお気に入りなのか。
まぁ、強面気味ではあるが、根が素直で明るくて懐っこいし。
俺から見てもあいつはいい奴だと思う。
栗原はゲーム好きな友人とオンラインゲームをしていて、しきりに小春に『小春もやってみない~?』と誘ってる。
小春はゲームの中で暴れることよりも、大自然の中で体を動かす方が好きな女の子だ。
昔から虫取りだとか、魚釣りだとか。
俺について回って過ごしたせいか、アクティブすぎるくらい元気溢れる遊びが好きだ。
だから、『海水浴』という一大イベントを謳歌しないはずがない。
*
「兄貴、あとはうちらでやっとくっす」
「悪いな」
目的地に到着した俺らは荷物を下ろし、一足先に出たテカたちが場所取りしてくれた所へと。
テント張りや荷物番はテカたちに任せ、俺らは水着に着替え、海へと繰り出した。