姐さんって、呼ばないで
紅葉の帳、真っ赤な海

十月下旬のとある朝の教室。
朝晩の気温がだいぶ下がり、長袖一枚では物寂しい季節へと移り変わった。

長袖シャツの上にカーディガンを羽織った子が結構目立つ。
ブレザーを着て過ごせばいいのだが、肩パットがある分、動きづらい。
だから、登下校の時以外はブレザーを着てない子が多い。

「小春ちゃん、詠ちゃん、オハ~」
「美路ちゃん、はよっ」
「おっはよ~っ」

すっかり仲良くなった小春と詠と美路。
お昼ご飯も一緒に食べていて、グループ行動を取る時は、いつも三人一緒だ。

「そう言えば、知ってる?F組の野中さん、『LUXE(ルクス)』の読モにスカウトされたんだって」
「えっ、そうなの?スタイルいいし、すっごい綺麗だもんねぇ」
「スカウトって、本当にあるんだね~」

『LUXE』は、ティーンの女の子に人気のファッション雑誌。
プチ贅沢な感じで、普段は着ないような少し上品な感じが取り入れられているものが多い。
それを如何にカジュアルに着こなすかがポイントで、小洒落た感をさりげなく演出してくれるコーデは、記念日など特別な日に着たいという圧倒的な支持者で支えられている。

詠ちゃんはボーイッシュなタイプだから、『絶対着れない!』というが、長身で美人な彼女なら何でも着こなせると思うのに。
美路ちゃんはお目目ぱっちりかわいい系の顔立ちで、私服も比較的ひらひらしてる服が多い。
雑誌を見たりして、それとなく可愛らしさは取り入れているつもりだけど、どうしても動きやすさを重視しがちな小春は、もう少し頑張らないと、と思った。

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