姐さんって、呼ばないで


「ん~、無難にネクタイとか?」
「私はお揃いのモノの方が桐生さん喜ぶと思うよ?」

ゼリー屋さんを出た私たちは、『仁さんに御礼がしたい』という私の願いを叶えるべく、駅ビルの中を散策している。

記憶がないだけで、今までプレゼントをして来たと思うけれど。
彼の好みもすっかり忘れてしまっているから、何を選んでいいのか分からない。

「美路ちゃん、お揃いって、例えば?」
「そうだね~、マグカップとかハンカチとか。あ、スマホケースとかでもいいと思うし。個人的には、色違いの紐のスニーカーってのが夢なんだけどね。履いて貰える相手を探すのが先っていう…」
「スニーカー、いいね!パーカーとかTシャツはあからさまだけど、足下はお洒落感あるよ」

美路ちゃんの夢、素敵だなぁ。
あの海の日以来、鉄さんとは結構話せるようになったみたいだけど、かなり手強いというか、軽くはぐらかされてると美路ちゃんは言う。
まぁ、高校に来たのも、仁さんの護衛だからね。
恋愛しに来たわけじゃないし。
たぶん、一線を引いてるんだと思う。

スニーカーを二足買うとなると、お小遣いが底をついてしまう。
記念日ならともかくとして、そんな高価なものを贈るのもどうかと……。

「許婚なんだしさ、ペアアクセでもいいと思うけど。……小春ちゃんはまだ桐生さんのこと思い出せてないんでしょ?」
「……うん」
「ペアアクセ?……小春、幾つか持ってたと思うけど」
「え?」
「ピンバッジとかブレスとか。……あれ?小春、ピンクダイヤのネックレスは?最近、見てないけど」
「……ネックレス?……ピンクダイヤ??」

詠ちゃんが思い出しかのようにスマホのアルバムを遡り始めた。

「あった!これこれ!!」

そこに写っていたのは、Vネックのニット姿の私の首元に輝くゴールチェーンのピンクダイヤのネックレスだった。

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