君に抱いた恋心を記憶の中にそっとしまって。

なんでここにいるの？


なんで……。


頭の中は混乱するばかり。だけど向こうは気づいていないのか優しく笑っている。


その視線の先には、知らない女の子がいた。


遥陽は優しい笑顔をその子に向けている。3年前とほとんど変わらない彼を見て、胸がきゅうっと締め付けられる。


でも、その優しい笑顔を見て、ほっとしている自分もいた。


自惚れにも程があると思うけど、私のせいで恋愛するのが怖くなっていないか不安なところがあったから。


遥陽を見ても動揺しないで冷静に安心している自分に驚く。幸せそうなその笑顔に自分も嬉しくなる。


そして間もなく、遥陽とその女の子は歩き出して姿が見えなくなった。



「お幸せに」



無意識につぶやいた。


遥陽には幸せになって欲しい。ずっとそう思っていたから、幸せそうな姿を見て嬉しくて。


これが最後に見る姿かもしれないと思うと、良かったなと思えた。