君に抱いた恋心を記憶の中にそっとしまって。

「初優!おまたせ。待った?」


「るい!ううん、全然」



そんなことを思いながらぼーっとしていると、るいが来て、笑顔で名前を呼んでくれた。


好きな人に名前を呼ばれて、振り向く。



「なんか嬉しそう。いいことあった?」


「うん。ちょっとね」



るいは私を見ると、微笑みながらそう言った。勘がいいからすぐに私の小さなことに気づいてくれる。



「初優が嬉しいなら俺も嬉しい」


「急にどうしたのよ」


「嬉しそうな顔みてたらそう思ったの」



突然の言葉にふふっと笑ってしまう。


素直に思ったことを言ってくれる、るいのその感じが好き。



「それじゃあ行こうか」


「うん!」



2人寄り添って笑う。


るいがそっと私の右手をぎゅっと強く握りしめる。強くて優しいその握り方が大好き。るいの手が大好き。


私は今、幸せだ。


苦しいこともたくさんあったけど、それがあるからこそ今の自分がいる。


だから、君に抱いた恋心を記憶の中にそっとしまうよ。


ありがとう、大切な人。


またね。


【初優side 終わり】
< 215 / 232 >

この作品をシェア

pagetop