氷の女と呼ばれた私が、クソガキ御曹司に身も心も溶かされるまで。
慌ててバスローブに着替え、まだ濡れていた髪をオールバック風にする。
フッ、これでセクシーな大人の男にしか見えないんだぜっ。
そう強気な自分を取り戻したのも束の間、ドアをノックされた瞬間に心臓がビクッと竦んだ。
「宗像様、天霧様をお連れしました。」と、支配人のおじちゃんがよそよそしい呼び方で俺に告げる。
それでも、まだ半信半疑だった。星羅さんが俺に会いに来てくれたなんて。
だけど、恐る恐るドアを開けた先には、本当に星羅さんが立っていた。
ホントにホントにホントに、本物の星羅さんだ…。
感動で言葉を失う俺の視界の片隅に、小さくガッツポーズするおじちゃんの姿が映る。
で、でも、困ったんだぜ。次に会う時は、もっと星羅を喜ばせてみせるって約束したのに、俺はまだ何も準備できていないんだぜ。
どうしようどうしようどうしようと焦ることしか出来ない俺と、目の前の美しい人に見惚れることしか出来ない俺がいる。
どっちの俺も、わざわざ戻ってきてくれた彼女に『フッ…もう俺が恋しくなったのかい、寂しがり屋の子猫ちゃん?』の一言も言えない役立たず。
どれだけ大人びた格好をしても、結局自分はただの子供でしかないのだと思い知る。
そうして押し黙る俺に向かって、彼女が言った。
まるで苦渋の決断でも下すみたいな表情で一言。
「…や、やっぱりあなたの秘蔵のポキャモンカードを見せて頂けますか。」
その瞬間、真っ暗だった先行きに微かな光が灯った気がした。
何の共通の話題もないと思っていた俺と星羅さんの間に、突如として灯った奇跡という名の光。
「も、もちろんなんだぜっ!!」と、俺は即答した。
星羅さんが俺の話に興味を持ってくれた、その奇跡に必死に食らいつく。
俺の厳選に厳選を重ねた自慢のポキャモンカードコレクション。
その奥深さは、とてもじゃないが一晩では語り尽くせない。
彼女を部屋に招き入れ、自信たっぷりに宣言する。