氷の女と呼ばれた私が、クソガキ御曹司に身も心も溶かされるまで。




宗像シドに招き入れられた最高級スイートは、広く優雅で贅沢な空間だった。

財閥御曹司という立場の彼に相応しい部屋。しかし、12歳の子供には勿体ない部屋。

宗像シドはバスローブ姿だった。

ややサイズが合っておらず、裾を引きずりそうになりながら一生懸命足を動かす姿を見て、ふと何かに似ていると思った。

…ああ、ペンギンの後ろ姿だ。

その昔、私の泣き顔を見てみたいと言い出した元・婚約者に、感動系の動物映画を無理矢理鑑賞させられたことがあった。

地獄のような1時間半だった上に、私の表情筋は微動だにせず、悔しがる元・婚約者に対して『ざまぁみろ』と思った記憶がある。

ブカブカのバスローブを纏って、トコトコと歩く宗像シドの後ろ姿は、その映画に出ていた子ペンギンにそっくりだった。

そんな私の視線に気付き、宗像シドが小憎らしい笑みを浮かべて言う。

「フッ、やれやれ…俺がセクシーだからって見惚れすぎなんだぜ、星羅。」

「………。」

バスローブの隙間から覗くあなたの肌は、セクシーというより健康優良児という言葉がよく似合いますと、正直に伝えるべきだろうか。

迷った末に、私は言った。

「シャワーをお借りしてもいいですか。」

「なら、星羅の為にローズバスを用意させるんだぜ。」

「いえ、シャワーだけで結構です。」

私はトコトコ歩きの子ペンギンに案内されて、バスルームへ向かった。

宗像シドが浴室の使い方を簡単に説明し、最後に余計な一言を付け加える。

「フッ、俺は先にベッドで待ってるんだぜ。」

そんな台詞を恥ずかしげもなく口にする12歳に、もう何度目か分からない溜息を吐く。




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