氷の女と呼ばれた私が、クソガキ御曹司に身も心も溶かされるまで。
『せいらさんとぷりくらをとる』
『せいらさんとぺあるっくでおでかけする』
『せいらさんにすきになってもらう』
『せいらさんにやけえ(×い)のきれえ(×い)なれすとらんでぷろぽーずする』
…ページをめくるごとに、私の頬が熱を帯びていくのを感じる。
ちなみに最後のページに書かれた彼の『さいしゅーもくひょー』は『せいらさんをしや(×あ)わせにする』というものだった。
「これがあなたのやりたいことですか?」と問うと、シドが再びコクコクと頷いた。
「しかし、これはやりたいことリストというか…その、何と言うか…。」
「えっ?あっ!!」
瞬間、シドの顔面からサッと血の気が引いた。
まるで人生最大の過ちを犯したかのような慌てっぷりで「まっ、間違えたんだぜっ!!おっ、俺のやりたいことリストはそれじゃないんだぜっ!!」
そう叫んで、私の手からノートを奪い取る。
それから、再びダッシュで別のノートを取りに行った。
「こっ、こっちが俺のやりたいことリストなんだぜっ!!」
ノートを差し出したシドの顔色は、今度は真っ赤に変わっていた。
ノートを受け取った私も、彼と同じ顔色をしているはずだ。
頬が異常に熱い。
ノートを開くと、今度は普通の内容だった。
『にほんのねづ(×ず)みーらんどにいく』
『あきはばらでめいどさんにあう』
『にほんのゆにばーさるにもいく』
それにしても、12歳にしては拙い字だと思った。
平仮名ばかりで、誤字が多いのも気になる。
先程、シドは『日本でたくさんやりたいことがある』と言った。
察するに、彼は日本人名を使用しているだけで日本人ではないのだろう。
阿良々木と同じだ。
あれも通称で阿良々木敬一と名乗っているだけで、実際は阿良々木敬一でもなければ日本人でもない。
