夏が終わる頃に
「あのさ、驚かないで欲しいんだけど、俺と付き合って欲しい。」

「え」

「そういう意味で。言わないと後悔すると思ったから、それだけ。じゃあね。」

それだけ言って、彼は去っていった。

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「とうとう大会まで1週間をきりました。まだまだ不安なところもありますが、残りの練習も頑張りましょう。」

一学期の終業式が終わり、部活動で忙しくなる頃。

同じく演劇部も夏の大会に向けて準備を進めていた。

「あやたん!今日も舞台練すんの?」

明るく、でも少し気だるげに言ってきたのは、副部長の咲良だ。

彼女はおっちょこちょいな所もあるけど、部活に対して真剣に向き合うその姿はかっこいいと思う。

でも、それを言ったら調子に乗るって分かってるから言わない。

「もちろん。てか、私じゃなくて部長に聞いてよ。」

「あやたんに聞いた方が早いんだもん。実際、あやたんが部長みたいなもんでしょ?」

「いや違うから。」

私、宮本彩はこの演劇部に途中から入部し、ちゃんとした大会に参加するのはこれが初めてだ。

以前、発表会にはでたことがあるが、まだまだひよっこの部員。

そんな私は当然部長を任せられる存在では無いのは十分分かっていた。

けど、あまりにも他の人のやる気が見られず、元々世話焼きな性格だったため、この部活を引っ張っていく存在となった。
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