完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話
「体調不良の久保さんを見つけたのが俺ですから、俺の上司に報告してもおかしくないはずです」

“絶妙に違うけど”

 だが、その提案は正直ありがたい。

「それに俺の上司は女性ですから、荷物も取りに行って貰えますし」
「え? で、でも」

 流石にそこまで頼むのは、と気が引けるが。

「この時間、人目があるのでは?」
「うっ」

 さらりと告げられた事実に思わず口ごもる。
 確かにそろそろ誰が出勤してきてもおかしくない時間だし、今はスーツで私の下半身を隠しているとはいえ早退するならば荷物は取りに行かなくてはならない。

“更衣室の中までお姫様抱っこで入るわけにはいかないし、下半身にスーツを巻き付けて歩いているのは怪しすぎるわ”

 お姫様抱っこだからこそ、スカートが捲れて下着が見えないようスーツをかけたという状況が成立しているのだ。

 いくら更衣室の中だとしても、着替え中の誰かに見られたらなんて言い訳すればいいのかわからない。
 
 その結果スカート自体を穿いていないとバレることまで連想した私は、他部署に迷惑をかけることに申し訳なくなりつつも彼の提案に頷くことにしたのだった。
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