完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話

2.その言い訳は、最善であったが最適解ではない

 お姫様抱っこされながら早川さんに受付をあける旨声をかけた私は、そのまま水澄さんに甘えさせて貰い彼の上司を呼んで貰う。

 早朝ではあったが、もう出社していたらしくすぐ電話に出てくれたようで。


「ロッカーの鍵をお借りしてもいいかしら?」
「あ、はい。お手数をおかけして申し訳ありません」

 そう声をかけられ、慌ててベストのポケットを探す。
 まだ更衣室には誰もいなかったようで、鍵を渡すと水澄さんの上司はにこりと微笑んで受け取りドアの前にいる私たちへの配慮か扉を開けたまま声をかけてくれた。

「ロッカーはどこかしら」
「あ、右端から二つ目のです」
「そう。わかったわ」

“仕事出来そう……! というか、本当に出来る人なのよね”

 彼女の細やかな気遣いに、なるほど流石気遣いが出来ると評判の水澄さんの上司なのだと実感する。
 そんな営業部の盛岡理香子部長は、まだ41歳という若さで部長としても営業としても第一線で活躍していて、受付にいる私にもやり手という噂が聞こえるほどの人だった。

「次出社した時でいいから総務部に早退届を出しておいてね。盛岡には言っておくわ」
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