いじめられ少女が腹黒優等生の一軍男子に溺愛されるまでの青春ラブストーリー【高嶺の君とキズナを紡ぐ】
メニュー表を篠原くんに差し出すと、篠原くんは、わたしの手首を掴んだまま、にこにこ笑った。
「俺はいらない」
「そうですか? それじゃあ、わたしだけ」
篠原くんがデザートいらなくても、わたしは食べるぞ。この手を離すんだ。
手を引っ張ってみるも、篠原くんの手の握力が強く振りほどけない。なんだよ、わたしはこの呼び出しボタンを押したいだけなのに。
「本当に頼むの?」
「え、もちろん頼みますよ?」
食後のデザートは定番でしょ? デザート食べないと、ご飯食べた気しないじゃん。
「前々から思っていたんだけど」
「へ?」
「津田さんは、もう少し摂取カロリーを意識した方が良いと思う」
「え……し……篠原くん……。デブはデザートを食うなって……言いたいんですか……?」
……信じられない……。
……信じられない。
……信じられない!!
酷いよ! 篠原くんも内心は、わたしをデブだと思ってバカにしてたんだ! 篠原くんだけは人を見かけで判断しない人だと思ってたのに……!!
呼び出しボタンから手を引くと、篠原くんも手を放してくれた。頬に目一杯空気を溜める。
そりゃ、わたしはデブだけどさ……でも、そんな分かりきったことわざわざ言わなくてもいいじゃん。わたしだって、せっかくのお出掛けだし、美味しいもん食べたいのに……。
「……しょうがないな」
篠原くんは苦笑しながら呼び出しボタンを押した。女性の定員さんが注文を取りに来ると、篠原くんがメニュー表をさした。
「季節のデザートをひとつ。あと、スプーンを二つください」
「かしこまりました、少々お待ちください」
店員さんが居なくなると、わたしは目をまんまるにさせて篠原くんを見つめた。デブはデザート食べちゃダメなんじゃなかったの?
「一緒に食べよう? 一つじゃ津田さんには多いけど、半分くらいなら食べても良いよ」
「う、うぅううう……」
「え、泣くの?! やめてよ、津田さん!!」
だって……だってぇええ!! 季節のデザートめっちゃくちゃ食べたかったんだもん!!!!
ファミレスを出て、『にじいろ水族館』にやってきたわたしたちは、券売機で中学生チケットを2枚買って、館内のゲートをくぐった。
薄暗い館内には、色とりどりの水槽とアクアリウムが彩っていて、ライトアップされた水槽の中で、赤いイソギンチャクが揺れている。鱗を虹色に輝かせた魚たちが、水槽の中を縦横無尽に泳ぎ周っていた。
「……わぁ……きれい」
本当に、南国の海の中みたいだなぁ。
「津田さん、カクレクマノミがいるよ。可愛いね」
「ほんとだ。可愛いですね! あ、篠原くん。この魚、すごくきれいですね」
「エンゼルフィッシュって言うんだって。本当にきれいだね」
魚を見つけるたびに篠原くんが隣で嬉しそうに目をきらきら輝かせている。こんなに楽しそうにしている篠原くん、はじめてだ。篠原くんは水槽をひとつひとつじっくり見て説明文をしっかり読む派らしい。こんな所でも勉強熱心なんだな。
「篠原くん、クラゲですよ、クラゲ!」
クラゲコーナーにやってきて、わたしは目の前でふよふよおよぐミズクラゲを目で追った。
色とりどりのLEDライトに透過したクラゲが色鮮やかに光っていて、すごくきれいだなぁ。
「クラゲって、ふわふわしていて可愛いよね」
「クラゲ、好きですか?」
「うん。リビングにアクアリウムがあったら、素敵だなぁて」
たしかに、クラゲ見てると癒されるもんな。
「クラゲって何食べるんですかね?」
「動物性プランクトンだって」
篠原くんは説明書きの文字を指さした。
動物性プランクトンが結局何なのかよくわからないけど、クラゲは動物性プランクトンってやつを食べるらしい。
水槽から目を離すと、他のカップルがいちゃついているのを見てしまった。考えてみれば水族館ってデートスポットだっけ。
すれ違ったカップルが、わたしと篠原くんを見比べてヒソヒソ話している。もしわたしのせいで、篠原くんがブス専とかデブ専とか、そういう特殊な性癖の持ち主だと思われたらどうしよう。わたしは、篠原くんの名誉のために少し距離を開けた。わたしたちはただの美少年と大木です。
一通り館内をぐるりと回ると、出入口に戻る。一周1時間程度の小規模な水族館だが、それを1時間半くらいかけてじっくり見て回った。
出入口付近にはお土産屋さんがあった。入口に、大きなペンギンのぬいぐるみが「いらっしゃいませ」と書かれた旗を持って立っている。この水族館にペンギンなんて居なかったのに。
「篠原くん、お土産見ますよね?」
「俺はいらない」
「そうですか? それじゃあ、わたしだけ」
篠原くんがデザートいらなくても、わたしは食べるぞ。この手を離すんだ。
手を引っ張ってみるも、篠原くんの手の握力が強く振りほどけない。なんだよ、わたしはこの呼び出しボタンを押したいだけなのに。
「本当に頼むの?」
「え、もちろん頼みますよ?」
食後のデザートは定番でしょ? デザート食べないと、ご飯食べた気しないじゃん。
「前々から思っていたんだけど」
「へ?」
「津田さんは、もう少し摂取カロリーを意識した方が良いと思う」
「え……し……篠原くん……。デブはデザートを食うなって……言いたいんですか……?」
……信じられない……。
……信じられない。
……信じられない!!
酷いよ! 篠原くんも内心は、わたしをデブだと思ってバカにしてたんだ! 篠原くんだけは人を見かけで判断しない人だと思ってたのに……!!
呼び出しボタンから手を引くと、篠原くんも手を放してくれた。頬に目一杯空気を溜める。
そりゃ、わたしはデブだけどさ……でも、そんな分かりきったことわざわざ言わなくてもいいじゃん。わたしだって、せっかくのお出掛けだし、美味しいもん食べたいのに……。
「……しょうがないな」
篠原くんは苦笑しながら呼び出しボタンを押した。女性の定員さんが注文を取りに来ると、篠原くんがメニュー表をさした。
「季節のデザートをひとつ。あと、スプーンを二つください」
「かしこまりました、少々お待ちください」
店員さんが居なくなると、わたしは目をまんまるにさせて篠原くんを見つめた。デブはデザート食べちゃダメなんじゃなかったの?
「一緒に食べよう? 一つじゃ津田さんには多いけど、半分くらいなら食べても良いよ」
「う、うぅううう……」
「え、泣くの?! やめてよ、津田さん!!」
だって……だってぇええ!! 季節のデザートめっちゃくちゃ食べたかったんだもん!!!!
ファミレスを出て、『にじいろ水族館』にやってきたわたしたちは、券売機で中学生チケットを2枚買って、館内のゲートをくぐった。
薄暗い館内には、色とりどりの水槽とアクアリウムが彩っていて、ライトアップされた水槽の中で、赤いイソギンチャクが揺れている。鱗を虹色に輝かせた魚たちが、水槽の中を縦横無尽に泳ぎ周っていた。
「……わぁ……きれい」
本当に、南国の海の中みたいだなぁ。
「津田さん、カクレクマノミがいるよ。可愛いね」
「ほんとだ。可愛いですね! あ、篠原くん。この魚、すごくきれいですね」
「エンゼルフィッシュって言うんだって。本当にきれいだね」
魚を見つけるたびに篠原くんが隣で嬉しそうに目をきらきら輝かせている。こんなに楽しそうにしている篠原くん、はじめてだ。篠原くんは水槽をひとつひとつじっくり見て説明文をしっかり読む派らしい。こんな所でも勉強熱心なんだな。
「篠原くん、クラゲですよ、クラゲ!」
クラゲコーナーにやってきて、わたしは目の前でふよふよおよぐミズクラゲを目で追った。
色とりどりのLEDライトに透過したクラゲが色鮮やかに光っていて、すごくきれいだなぁ。
「クラゲって、ふわふわしていて可愛いよね」
「クラゲ、好きですか?」
「うん。リビングにアクアリウムがあったら、素敵だなぁて」
たしかに、クラゲ見てると癒されるもんな。
「クラゲって何食べるんですかね?」
「動物性プランクトンだって」
篠原くんは説明書きの文字を指さした。
動物性プランクトンが結局何なのかよくわからないけど、クラゲは動物性プランクトンってやつを食べるらしい。
水槽から目を離すと、他のカップルがいちゃついているのを見てしまった。考えてみれば水族館ってデートスポットだっけ。
すれ違ったカップルが、わたしと篠原くんを見比べてヒソヒソ話している。もしわたしのせいで、篠原くんがブス専とかデブ専とか、そういう特殊な性癖の持ち主だと思われたらどうしよう。わたしは、篠原くんの名誉のために少し距離を開けた。わたしたちはただの美少年と大木です。
一通り館内をぐるりと回ると、出入口に戻る。一周1時間程度の小規模な水族館だが、それを1時間半くらいかけてじっくり見て回った。
出入口付近にはお土産屋さんがあった。入口に、大きなペンギンのぬいぐるみが「いらっしゃいませ」と書かれた旗を持って立っている。この水族館にペンギンなんて居なかったのに。
「篠原くん、お土産見ますよね?」