幼なじみが犬になったら、モテ期がきたので抵抗します!
「火恩寺君の、凄む顔とかすごい運動能力とかにはまだ慣れないけどね」
「ああ……」
すると火恩寺君はため息のような声をもらす。
「火恩寺君?」
「その俺は幸せなやつかもしれねぇな」
火恩寺君は優しい目をしてわたしを見つめてくる。
そんな様子に、恥ずかしいようなどうしていいか分からないような気持ちになる。
だから、つい野暮なことを言う。
「えーと……そう言うってことは、今の火恩寺君は幸せじゃないの?」
「どうだろうな」
するとそれ以上は語りづらそうにして、
「穂波さんのとこに行くぞ」
火恩寺君は表情を引き締めるのだけれど……。
「俺がどうかした?」
唐突に背後からかけられた声に、彼の目玉が飛び出しそうなほどに目を見開かれる。
振り返ると、想像に安く、スポーツタオルで汗を拭く穂波君の姿があった。
「穂波君?あれ?練習してたんじゃなかったの?」
「練習?それならさっき一旦休憩になったけど……」
そう言われて、運動場内を見ると三々五々、休憩をとっている生徒の姿が見えた。
火恩寺君と話をしている間に、練習は終わってしまったようだ。
けれど、それならそれで、この場で話が出来るからラッキーだ。
わたしはそう思うけれど、火恩寺君は、
「背後を取られるとは……」
ぶつぶつと呟きながら、顔色を悪くしていく。
穂波君の本質に、何が「見え」ているというんだろう?
「横堀に、タツヒコ。俺に何か用?」
「用は用なんだけど、ここだと話しづらいことなんだ」
休憩中の生徒がその辺をうろうろしている中で、龍の玉のかけらがどうと話はしづらい。
「そう?だったら、場所を移そうか」