幼なじみが犬になったら、モテ期がきたので抵抗します!
●お土産第一主義
そう、穂波君の了承を得たところで、場所を移動しようということになった。
のだけれど……。
穂波君を先頭に合宿所内を歩いていたはずのわたし達は、いつの間にか、視界の両サイドを岩場に囲まれた道を歩いている。
どこをどう通ってきたのかはまったく分からず、今こうして気づいた瞬間に、ぽんとこの場に放り出されたかのような感じがした。
どう考えてもおかしい。
「……気をつけろ」
と横を歩いている火恩寺君が小さく声をかけてくる。
そう言われても何に気をつければいいのか分からない。
「ほ……カズシ、ちょっと待てよ」
わたしは、周囲の変化に気に止める様子もなく先を行く穂波君に声をかける。
すると、穂波君は軽やかに振り返ると、
「無理しなくて良いよ」
微笑を浮かべながら、そう言う。
「無理?」
「無理して横堀幸太郎であろうとする必要ないってことだよ。本田さん」
「え?」
「あれ?間違っていたかな。君、本田美咲さんって言うんじゃないの?」
「ど、どういうこと?わたしのことを知ってるの?」
「教えてもらったんだよ」
「教えてもらったって、誰に?」
わたしがそう口にすると、穂波君はそれに答えることなく、わたしのそばに寄ってくると、顔を寄せ、
「見た目がこれじゃ、興ざめだな。けど、そのアンビバレンスがいいのかな」
そう言う。
穂波君から不思議な香りがして、クラクラとよろめきそうになり、わたしは慌てて飛びのいた。
のだけれど……。
穂波君を先頭に合宿所内を歩いていたはずのわたし達は、いつの間にか、視界の両サイドを岩場に囲まれた道を歩いている。
どこをどう通ってきたのかはまったく分からず、今こうして気づいた瞬間に、ぽんとこの場に放り出されたかのような感じがした。
どう考えてもおかしい。
「……気をつけろ」
と横を歩いている火恩寺君が小さく声をかけてくる。
そう言われても何に気をつければいいのか分からない。
「ほ……カズシ、ちょっと待てよ」
わたしは、周囲の変化に気に止める様子もなく先を行く穂波君に声をかける。
すると、穂波君は軽やかに振り返ると、
「無理しなくて良いよ」
微笑を浮かべながら、そう言う。
「無理?」
「無理して横堀幸太郎であろうとする必要ないってことだよ。本田さん」
「え?」
「あれ?間違っていたかな。君、本田美咲さんって言うんじゃないの?」
「ど、どういうこと?わたしのことを知ってるの?」
「教えてもらったんだよ」
「教えてもらったって、誰に?」
わたしがそう口にすると、穂波君はそれに答えることなく、わたしのそばに寄ってくると、顔を寄せ、
「見た目がこれじゃ、興ざめだな。けど、そのアンビバレンスがいいのかな」
そう言う。
穂波君から不思議な香りがして、クラクラとよろめきそうになり、わたしは慌てて飛びのいた。