幼なじみが犬になったら、モテ期がきたので抵抗します!
「先輩、近い、近いです!鼻息が……」
「抜け駆けは駄目だよ、本田。男子部のやつ、どんどんチア部と付き合っていって、在庫残り僅かなんだから!」
 人間を在庫にたとえるってどうなんだろ。
 それはともかく、この先輩、さっき穂波君が見れなかったって言っていた先輩だ。
 穂波君を見ていたって言ったら、どうなるかな?

「先輩、穂波君好きなんですか?」
「そうなの!カッコいいよね、穂波君。色素薄くてちょっと日本人離れしてるし!」
「高塚、話題そらされてる、そらされてる」
「あ、そうだよ。それより、本田、誰見てたの?」
 今井先輩が援護射撃をしてしまい、本題に戻される。
「穂波君って言ったら、どうします?」
 冗談っぽくそう言ってみると、高塚先輩の顔にさあっと影がさす。

 そして、
「握りつぶす」
 とどすの利いた声でおっしゃる。
「あ、ははは……」
「まさか、本田、穂波君を――」
「い、いやいや!い、犬見てました!グラウンドをかける犬を」
 嘘じゃない。
 練習中何度か、開け放たれたドアの向こうに、ボールを追いかける犬が通り過ぎたのを見ている。
 わたしがそう言うと、話に入っていた面々はみんなして溜息をつく。
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