幼なじみが犬になったら、モテ期がきたので抵抗します!
「ま、本田はそんな感じだよねー」
「色気ねー。浮いた話ないのー?」
「ないの、て言われても……」
「でも、本田いつも男子と帰ってるよね。あの、2年の」
「あーあの」

 幸太郎が「あの」で表現されてしまうのは普段の行いが原因だ。
 最近だと、4月の朝礼でサッカー部が表彰されたとき、賞状を渡してくれた校長に、
「ありがとう、グランパ」と言って全校を引かせたのが記憶に新しい。
 本人はまったく覚えていないらしいけれど。

「付き合ってんの?」
「幼なじみです」
 そう言うと、再び溜息をつかれる。そして、
「うわあ、つまんねー。幼なじみとくっつくパターンだ。チョー漫画的!」
「わー、つまらん!非常につまらん!幼なじみいないわたしは、どうしろちゅーんじゃ!」
「ていうか、幼なじみの定義って何?わたしも今から作れないかな幼なじみ!?」

「もう幼くないじゃん」
「うっそっ。まだ、幼さ現役ですけど?」
「幼さ現役でごじゃいましゅるー」

「いや、それ赤ちゃん言葉じゃないでしょ」
「幼なじみ欲しいでごじゃいましゅるー」
「しゅるー」
「アホか」
 と怒涛のスピードで会話が流れていく。

「あ、あの……」
 間を挟まないあたり、さすが先輩だ。
 付き合ってないって否定をさせてすらもらえない。
 何とか割って入れないか、とタイミングを見計らってみるけれど、そうしているうちに、いつの間にか会話の流れは、若手俳優の話に移ってしまっていた。

 でもまあ、わざわざ訂正するのも面倒だしね。
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