エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
 本当はもっとこの会場を泳ぎ回りたいと思っているのだろうに、私が縛りつけているんじゃないだろうか。申し訳なくて唇を噛む。

 もしかしたら百合先生から学んだイタリア語を披露する時が来るかも、なんて思っていたけれど、北斗が会話の主導権を握っているため、タイミングがやってこない。

 私にはあまり話してほしくないのだろうかという考えがよぎったせいで、さっきから不安定な足場に立たされているような心細さが拭えない。

 頑張っても彼の役に立てないのだろうかと寂しくなっていると、不意に日本語が聞こえた。

「北斗! おーい!」

 ドイツ人の外交官と話していた北斗が、声のしたほうを振り返る。

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