エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
 必死にこぼした吐息の熱さに自分で驚く。

 顔を背けようとしても、彼の指が、そして唇がそれを許さない。

「んん、んっ……ん、ふぅっ……」

 くぐもった声が妙に艶めかしく響いてしまい、ぞっとする。

 ――私は、彼のキスを喜んでいる。

「やめて……っ」

 渾身の力を振り絞り、北斗の肩口を押しのける。

 新鮮な空気が一気に流れ込んできてむせてしまった。

 苦しかったせいか生理的に流れた涙が頬を伝って落ちていく。

 うれしくなんてない。夢にまで見た北斗のキスを、もっと求めているなんて。

 彼を傷つけた私にそんな資格はないのだから――。

「そういえばカメラがついているんだったな」
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