エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
「わかるわけないでしょ」

「俺を捨ててから、恋人ができていないそうだな」

 当てろと言ったのは北斗なのに、いきなり話を変えてくる。

 人生で一番愛した人に恋人の話をされるのは、彼に責められるよりも胸の痛みを生んだ。

「……それがどうかした?」

「だから話を通しやすかった。ありがたい話だ」

「なんの話――」

「君は俺と結婚するんだ」

 咄嗟に反応できなかったのは、私のせいじゃない。

「今、なんて……」

「婚姻届なら、あとは君の名前を記入するだけでいい。さっきサインをもらってきた」

「だからなにを言ってるの!?」

 五年前の北斗は、こんなにわけのわからない人ではなかった。
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