君に甘やかされて溺れたい。


 すごいな、藍良くん。ファンクラブがあるなんて。


「アイルくんと同じだ!すごい!」

「どこに感動してんだよ」

「かわいそうな藍良。漫画の中の王子に負けてるなんて」

「負けてるなんてないよ。そもそもアイルくんは唯一無二の存在だもん」

「わかったわかった。でも紅、気をつけなよ」


 気をつける?何が?


「藍良のファンって過激派多いみたいだから。紅のこと妬んで嫌がらせしてくるやついるかもしれない」

「そうそう。のんきにアイルくんにときめいてる場合じゃないからね」

「う、わかった」


『甘恋。』でもアイルくんのファンに嫌がらせされる話があった。
 でもアイルくんが助けてくれたんだよね。

 思い出してもアイルくん、素敵だなぁ!

 そんなことを考えていた私は、本当にのんきだったと思う。

 ちゃんと若菜ちゃんもちいちゃんも忠告してくれたのに。


「あ、あれ……?」


 下駄箱の中の靴が、泥まみれになっていた。
 靴の中にも泥や小石が入っちゃってる。

 あれ、これってもしかして……


「紅ちゃん!」

「あ、藍良くん」


 咄嗟に下駄箱の扉を閉めた。


「一緒に帰ろ」

「あ、ごめんね。今日は用事があるの」


< 13 / 30 >

この作品をシェア

pagetop